データを活かすには、多くのプロセスがあります。課題を見つけ、領域のデータを取得して前処理をし、モデルを決め、最適化法を選び、分析結果を解釈し、その結果を周囲にわかりやすく伝え、意思決定に活かす。そのためには、データ分析に必要な環境の設計・開発、運用を行うデータエンジニアリングと、構築したデータ基盤に蓄積されたデータを分析するデータアナリシスの2分野において専門知識とスキルが必要です。
博士前期課程では、これらのプロセスを理解・習得するだけでなく、状況に応じた「特別仕様のモデル」を構築し、分析ができる“一気通貫型”の人材育成をめざしています。
企業・行政からの派遣入学を受け入れているため、異業種交流、オープンイノベーションの場としての役割も担っています。働きながら学ぶ社会人にも配慮した、博士前期課程の特色を紹介します。

実践を意識した理論を幅広く学ぶ

データエンジニアリング科目、データアナリシス科目、およびこれらを基盤にモデル化の方法論を学ぶモデリング科目に加え、ビジネスシーンで必要となるプロジェクトマネージメントや、さまざまな領域についての固有の知識と分析例についても学びます。M2(2年次)では、課題研究を通じて、実際のデータに触れ、一連の問題解決の流れを体感することで、知識だけでなく、問題解決の成功体験を経験し、生きたデータから実際に価値創造を行えるようになります。

  • M1(1年次)
    さまざまな領域知識と分析例を学び、修士レベルのデータサイエンスの基礎的能力を身につけます。
  • M2(2年次)
    社会的な問題の解決に向けて貢献するような修了研究をします。派遣入学の方は勤務先においてデータを用いた問題解決に取り組みます。一般入学の方も派遣入学の方も滋賀大学の研究機関「データサイエンス・AIイノベーション研究推進センター」が企業や行政、教育機関などと行う共同研究に参加することができます。

博士前期課程の科目構成

修了には30単位以上の取得が必要です※。データエンジニアリング科目・データアナリシス科目・モデリング科目では、座学として理論的な知識を学ぶだけでなく、学術論文から最先端の理論や技術を学んだり、自らプログラミングの実装を行って様々なデータの処理・分析をするスキルを身につける実践論も開講されます。

※データエンジニアリング科目・データアナリシス科目・モデリング科目の実践論を4単位以上含むこと。ただし、実践論を履修する場合は、対となる講義も合わせて修得すること。

入門科目(2単位)

  • データサイエンス概論:人材像とそのレベルに達するためのステップ、そして基礎的概念を概説(必修)

データエンジニアリング科目(2単位以上取得)

  • Webマイニング特論 (選択必修) / Webマイニング実践論
  • サイバーフィジカル特論 (選択必修) /サイバーフィジカル実践論
  • マルチメディア特論 (選択必修) /マルチメディア実践論

データアナリシス科目(2単位以上取得)

  • モデリング基礎理論 (必修) /モデリング基礎実践論
  • モデル評価論/モデル評価実践論
  • 確率過程理論/確率過程実践論

モデリング科目(4単位以上取得)

  • 教師あり学習 (必修) /教師あり学習実践論
  • 教師なし学習 (必修) /教師なし学習実践論
  • 時系列モデリング/時系列モデリング実践論
  • 統計的モデリング/統計的モデリング実践論
  • 強化学習・転移学習/強化学習・転移学習実践論

価値創造科目(10単位以上取得)

  • 意思決定とデータサイエンス (必修)
  • 領域モデル実践論
  • 課題研究 1、2、3、4(必修)

ビッグデータ解析等に基づく修士論文

価値創造科目「課題研究 1、2、3、4(必修)」について

具体的な価値創造につなげる実践的研究を行うのが「課題研究1」、「課題研究2」、「課題研究3」、「課題研究4」です。各種専門領域の担当教員の指導の下、現場の具体的な課題を読み取り、実際のデータを使って解析し、その知見を活かして価値創造を図ります。滋賀大学ではデータサイエンス分野において300件もの産官学連携の実績があり、これらの共同研究に参加することで、データから価値を創造するまでの課程を実践の場で体験することもできます。

データサイエンスを学術的に学ぶために
履修前は「プレマスター教育」でサポート

データサイエンス研究科への入学者は、実務経験を持つ企業派遣の社会人、それ以外の学び直しの社会人や他大学・他学部から進学する一般入学者、データサイエンス学部出身者の3タイプが想定されます。入学者のバックグラウンドは異なりますが、eラーニング(講義動画など)によるプレマスター教育を受講することにより、入学者はデータサイエンス研究科の授業に対応できる学力を身につけてから、カリキュラムを履修できます。
入学者は、メンター教員と相談し、どのeラーニング科目を履修すべきかの指導を受けることができます。

大学連携プログラムの受講が可能

本学は「独り立ちデータサイエンティスト人材育成プログラム (DS4)」(大阪大学を中心とした関西の大学連携プログラム)や、「関西広域医療データ人材教育拠点形成事業」(京都大学を中心とした大学連携プログラム)に参加しています。前期博士課程の学生は、このプログラムの講義を受けることができます。

社会人も学びやすい受講スタイル

リスキリング教育が重要視される昨今、仕事をしながらの通学希望に応えるため、勤務状況に配慮した受講スタイルを用意しています。

集中受講の導入

開講している科目を短期間で集中的に受講することができます(大学院設置基準第14条に基づく)。

上の受講スタイルの場合、1週目に入門科目の「データサイエンス概論(必修)」、2週目にモデリング科目から「教師あり学習」、3週目にデータエンジニアリング科目の「Webマイニング特攻論(選択必修)」というように、それぞれの科目を集中的に履修します。短期開講による授業科目を設定しているほか、講義はオンラインにより対面でも遠隔でも受講が可能なため、働きながらでも通学が可能です。

修士論文の執筆

M1(1年次)で授業と修士論文の準備をし、M2(2年次)は職場などに戻って修士論文を執筆することができます。

〈受講例〉

  • M1(1年次)
    修論執筆以外の26単位を取得。13週、週3~5日で1週あたり15コマを受講※
  • M2(2年次)
    職場などに戻り修論執筆(課題研究3、4)の単位を取得

※データエンジニアリング科目、データアナリシス科目、モデリング科目の中から実践論4単位を必修とする。ただし、実践論を履修する場合は、対となる講義も合わせて修得すること。

長期履修学生制度

仕事をしながら学ぶなど、標準の修業年限で修了することが困難な学生を対象とした制度です。事情に応じて標準の修業年限(2年)を超えて一定の期間(3年または4年)にわたり、計画的に教育課程を履修し、修了することで学位を取得することができます。
長期履修学生として認められた場合、授業料は標準の修業年限である2年間分の総額を、あらかじめ認められた一定の修業年限で除した額にして、それぞれの年に支払います。

奨学金

日本学生支援機構のほか、都道府県の教育委員会、地方公共団体および財団法人等の奨学金を貸与、給付ともに取り扱っているほか、以下のような独自制度も設けています。

滋賀大学大学院データサイエンス研究科奨学制度

学力が優秀な学生が学業に専念できるよう、本学データサイエンス基金を活用した本研究科独自の奨学制度を設けています。入学年に100万円を、入学試験時の成績優秀者10名程度に支給します。なお対象は、早期特別入試および一般入試志願者全員となります(派遣社会人を除く)。

滋賀大学経済学部・データサイエンス学部後援会資格取得等報奨制度

滋賀大学経済学部・データサイエンス学部後援会では、資格取得等報奨制度を用意。資格試験や語学試験等の基準を満たした在籍する学部生、大学院生を対象に報奨金を給付するもので、報奨額については、資格・試験により異なります(後援会費を所定の日時までに納入していることが要件)。

関連リンク

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