教員インタビュー
色々な分野に色々な教え方があっていい。言葉の研究に画像・映像を組み合わせ、学習のための資料集めをサポート。

南條 浩輝
データサイエンス学部 教授
研究分野:自然言語処理、音声言語情報処理、情報検索
普段私たちが意思伝達のツールとして用いている「言葉」。SNSやインターネットの発達により、自分の意見を文字や声で発信する機会も多くなりました。そんななか、子どもの頃から先生になりたかった南條先生は、音声データやテキストデータの情報処理の研究を、教育分野へ活かそうと考えています。
様々なデジタル教材が増えて便利になった反面、必要な知識を自分で集める必要性が高まってきた昨今。「音声やテキストだけでなく、画像や映像も組み合わせた情報処理を研究し、効率的な検索をサポートしたい」と、学びを求める人を応援する南條先生に、研究内容を詳しく語っていただきました。
聞き手 データサイエンス学部5期生/2年(当時) 宮下 晶
※本記事は、『滋賀大学データサイエンス学部パンフレット2025年』に掲載された記事に、一部加筆・修正したものです。本文中に記載されている内容や所属・肩書き等はすべて取材当時のものです。
世界中の動画・サイトから、より効率的な情報収集を
Q.現在されている研究について教えてください。
元々、自分たちが普段使っている「言葉」というものに興味があって。現在は多くのテキストや音声から、感情、意見などの様々な内容を取りだす自然言語処理に画像や映像を組み合わせた情報処理について研究しています。
最近、言葉で指示した内容をイラストにする技術が開発されていますよね。その技術を活かし、自分の書いた文章に対して読み手がイメージする光景を絵にし、表現したい内容とあっているかを確認できるようにすることなども、この研究の活用事例としてあげられると思います。現在興味があるのはそれを教育分野に活かすことですね。
Q.教育分野での活用とはどのようなものですか?
例えば、今講義動画や勉強サイトを探そうと思ったら、キーワードを入力して検索しますよね。ただ、欲しい内容が検出されるには、入力した内容と、作成元が提示しているタグやキャプションとの一致が求められることがほとんどです。そこに映像や画像を組み合わせ、更に性能をよくする。すると発信元が言語化していない内容が含まれる映像や画像も検出できますし、もっといえば入力した内容に合わせて、動画やサイトの一部分だけを取り出すということも可能になります。世界中にある様々な情報源から、より効率的に欲しい情報を集めることができるようになるため、生徒にとっても先生にとってもプラスになると思います。
色々な教え方が色々な分野にあっていい
Q.現在の研究を始められたきっかけはなんですか?
子どもの頃から先生になりたいと思っていたんです。学校に行き、教えられたり学んだりすることで、できなかったことがどんどんできるようになる。それが本当にすごいと思って。教育分野に興味を持ったのはそこからですね。
また音声認識の研究に携わることで、元々苦手だった英語を音声学の観点から見るようになり、仕組みがわかって学ぶことが楽しくなりました。教科書通りの教え方だけじゃなくて、例えば音声学だとか、もっと色々な教え方が色々な分野にあっていいと思うんです。その方が学ぶ方も教える方も勉強になりますよね。そんな経験から学びにつながる材料集めをサポートしたいと思い、自分の研究分野を活用できないかと考え始めました。
言葉の研究から、人間自身のルーツ、進化の可能性を探る
Q.先生の研究分野の魅力はなんですか?
人工知能を通して、最終的に人の仕組みを知ることができる面白さですね。研究では主に人工知能を用いてテキストや音声から、そこに込められた感情や想いを読み取るわけですが、精度をあげるための学習の繰り返しのなかで人間の脳の仕組み、言葉の仕組みを実感することがあります。もし人工知能の出力結果や過程が人間に近づいていけば、それまでの学習のなかに人の仕組みのヒントがありますし、全く違う過程で、人間を超える答えを出したとしたら、その過程の解析には人間がもっと賢くなれる可能性が眠っている。人工知能を使用しながら、その先にある人間自身を知れることはこの分野の大きな魅力ですね。
多様な物事にチャレンジし、学びを
Q.これからデータサイエンティストになる方々へのメッセージをお願いします。
いろいろなことに挑戦し、いろいろなことに触れてほしいです。多くの経験を積むと、物事を比べて似ている点や異なる点をあげられるようになります。まったく関係がないと思っていた分野同士が思わぬところでリンクする、ということもあるでしょう。それらは新しい発想や取り組みにつながり、最終的には自分自身の成長にもつながると思います。ぜひ幅広い物事にチャレンジしていってください。