専任教員

「あったら便利だけどなくてもいいよね」から「これがないともう仕事がはかどらないよね」までもっていきたいですね。

村松 千左子

データサイエンス学部 教授
研究分野:画像解析、医用画像解析

データサイエンスと一口にいっても様々な分野があります。その分野の中の1つである画像解析は、画像の内容をコンピューターに理解させて情報の抽出やデータ化を行う技術で製品の検査作業や自動運転などに用いられています。その画像解析の中でも、特に医用の画像解析を研究されている村松先生に学生時代や研究についてお聞きしました。

聞き手 データサイエンス学部3期生/4年(当時) 重松 孝宏
※本記事は、滋賀大学データサイエンス・AIイノベーション研究推進センターのセンター誌『Data Science View Vol.6』の特集企画『私の「研究」履歴書』に掲載された記事の内容に若干の修正を加えたものです。本文中に記載されている内容や所属・肩書き等はすべて取材当時のものです。

放射線技師から研究者へ

Q.なぜ研究者になろうと思ったのですか?

研究者になりたいというよりは、学部を終えた時にもう少し勉強して深掘りしたいという思いがありました。高校時代4年間をアメリカで過ごしたため、もう一度海外の大学院で勉強したいと思っていました。そんなとき、大学時代にお世話になった先生の恩師がシカゴの大学におり、紹介して頂けたため大学院に進学しました。
シカゴ大学の大学院の私が進んだ学部では、基本的に修士の学生はとらず、最初から博士課程のプログラムだったので、修了したらその流れで研究者になりました。ですから研究者になりたくてなったというよりは、大学院で勉強したくて研究を始めたら楽しかったので、これまで続いてきたというのが正しいですね。
大学院では医学物理を専攻し、画像解析はその一環として学びました。大学の卒業論文で画像の物理特性について学び、大学院の研究室で画像解析について学びました。大学では特にプログラミングはしていませんでしたから、プログラミングは大学院に入ってから学びました。そこでプログラミングや画像解析の面白さを知りました。 研究はこうしたら新しいことが分かるかもしれないとか良い結果につながりそうだとか、自分で考えたことがある程度予想通りになると嬉しいですね。一方で、自分が思いもよらなかったことをやっている研究を見たり、予測と全く違ったけど新たな発見があったりするとそれはそれで面白いです。

データから見る最適化医療

Q.先生の研究分野はどのような分野なのでしょうか?

レントゲン写真やMRI、超音波画像などの医療で使われている画像から、お医者さんが診断する際に役に立つような情報を引き出したり、時間や手間がかかるようなことを自動化したり、記録として残すといった用途のために解析をして診断に役立てるといったことをしています。
例えば検診で撮影する胸のレントゲン写真や乳癌検査のマンモグラフィなどは、ほとんどのケースが正常です。大量にある画像を短時間で読影しなければならないため、たまにある異常なケースを見落としてしまう可能性があります。そんな時にスペルチェックのように異常の可能性があるところを指摘してくれる、そんな目的から研究が始まった分野です。今ではAIの進歩により、トリアージのように初めにAIである程度ふるいにかけるというような用途も検討されています。
他にも診断レポートの記入にかかる時間を短縮するためにある程度自動で作成するとか、過去の類似した症例を検索して診断やレポート作成に役立てるということも考えられています。今はプレシジョンメディシンといって、個々の患者さんに合った最適な治療法を考える時代ですので、治療法の選択にも画像解析が役立てられています。

AIによる実用化への加速

Q.医用画像解析について今後の展望やこうなったらいいなということはありますか?

これまで医用画像の解析は、研究はされていても実用化に至らなかったことが多かったんですね。でも今はAlのおかげで様々な企業が参入して、多くのソフトが出ているので、臨床現場で使われることが多くなっています。
でもまだまだ手探り状態なことが多いんですよ。お医者さんからしても現状では「あったら便利だけどなくてもいいよね」という認識ですので、「これがないともう仕事がはかどらないよね」までもっていきたいですね。
それと、今はまだ一部分でしか使われてなくて、全体に組み込まれていない感じがしているので、診断から治療、再発や予後まで一貫したシステムになればいいかなと思っています。

無限の可能性を秘めた応用分野

Q.これからデータサイエンティストになる方々に一言メッセージをお願いします。

データサイエンスは本当に幅広くて、どんな分野にでも役立てられることがすこく魅力だと思っています。それは私たちの研究している画像分野にも適用できますし一般的な情報を扱うものもそうで、いろいろなアプリケーションがあって色々な応用分野があります。本当に幅広いので、自分の興味がある分野や活かす先を見つけることができると思います。広い視点をもって色々なことに役立ててよくしてもらいたいです。

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