専任教員

これからも、研究分野を軸足にいろんなことに手を出していけたら、と思っています。

田中 琢真

データサイエンス学部 教授
研究分野:理論神経科学、非線形科学

新型コロナウイルスに揺れた2020年、データサイエンスはクラスター対策や経済への影響の分析に活用されました。田中准教授は、ご自身の研究分野を活かして現在それらに取り組まれています。広い視野を持ち、幅広く研究されている田中准教授に、研究者を志したきっかけや今後の展望を語っていただきました。

聞き手 データサイエンス学部学部3期生/3年(当時) 江﨑 珠侑
※本記事は、滋賀大学データサイエンス・AIイノベーション研究推進センターのセンター誌『Data Science View Vol.5』の特集企画『私の「研究」履歴書』に掲載された記事の内容に若干の修正を加えたものです。本文中に記載されている内容や所属・肩書き等はすべて取材当時のものです。

先生のルーツ

Q.先生は医学部のご出身ですが、医学部で研究をやろうと思ったきっかけはありますか?

もともと基礎研究をやろうと思って医学部に入学しました。身の回りに医学部で基礎研究をやっている人が多かったからか、私も小さいころから漠然と研究者を志していました。実験や臨床が得意なほうではなかったので、理論系の研究をするようになり、その中で一番メジャーだった理論神経科学を学ぶようになりました。でも、勉強のために医学部以外の研究室に居候させてもらうこともあって(笑)。そこでの先生が非線形科学もやっていたので、私も非線形科学を学ぶようになりました。

Q.学生時代に戻ってやりたいことなど何かありますか?

特にはありませんが、友達をたくさん作ったほうがいいですね(笑)。特に私の居た医学部は普通横の結びつきが強いんですが、私は研究のほうに行ってしまったので、大学院で一緒に研究していた人と学会などで会う程度になってしまいました。ですが、所属していた研究室と学びに行っていたところで二つのつながりが今もあるので、そこはすごく良かったですね。

研究者としての姿

Q.現在、どんな研究をされていますか?

私の分野は、機械学習とは逆をいくような考え方ですね。データ一つ一つの詳細をいったん忘れて、データ全体に共通する性質を見つけて、シンプルなモデルでそれを再現するといったことをやっています。ざっくり全体をとらえて物事を理解するイメージですね。例えば、東南アジアのホタルには数万匹が一本の木に集まって同時に発光するという性質を持ったものがあるのですが、そういった振動しているものが同期することについての研究があります。
昨年からは、新型コロナ関連の研究にも取り組んでいます。感染症そのものについては感染者数の推定、感染症と社会の関係については滋賀銀行と提携して経済の落ち込みについて研究を行っています。そのほかにも実験を主に行う先生との共同研究でそのデータ分析を担うこともあります。

Q.研究者としての今後の展望を教えてください。

私の研究分野は学際的、境界領域のような分野で、必ずしもデータサイエンスとは言えないこともあるような分野で研究を始めることもあります。昨年コロナや経済データといったいろいろな分野をつまみ食いしてきたように、ほかの境界領域に動くことなどがしやすいんですね。なので、自分の研究分野を軸足にいろんなことに手を出していけたら、と思っています。

DS学部教員として…

Q.3月で1期生が卒業します。教員として今の思いを聞かせてください。

学部の立ち上げから5年間、卒業生が出るところまで来たのだなという気持ちです、あとはそれだけ年を取ったなあと(笑)。1期生として、入学当初は右も左もわからなかったであろう学生たちの卒業研究の発表の完成度を見て、教育の価値や効果を感じましたね。

Q.最後に、これからデータサイエンティストになる方々へのメッセージをお願いします。

データサイエンスは大きく分けると情報学と統計学の二本柱ですが、分野と分野を結び付けるような領域科学、ドメイン科学の知識が重要だと感じています。データサイエンティストとして、そこは一生ひろげていかなければいけない部分ですね。近い将来、想像もできなかったようなものがデータサイエンスの領域に入ってくるはずです。そういう新しいものや意外なものにも手広く取り組める人になれるよう、また自分の視野を広げ続けられる人になれるよう、教養や基礎を作ることを心掛けてもらいたいですね。

教員紹介はこちら