専任教員

小さい頃の興味を研究に。数学と化学を融合させて、データを駆使した薬創りを行う。

江崎 剛史

データサイエンス学部 准教授
研究分野:インシリコ創薬

薬を創るには、膨大な時間とお金がかかると言われています。江崎先生はこの問題を解決するために、データを駆使した創薬の研究を行っています。この研究は、薬を創る時間とお金を削減できるだけでなく、新しい薬を必要とする人により早く届けることにも繋がり、多くの製薬会社が活用し始めている方法です。「どこに行っても自由にやらせてもらえる環境があって、全面的なサポートをしてくれる」家族に感謝する江崎先生に、これまでの経緯や研究内容などを詳しく語っていただきました。

聞き手 データサイエンス学部3期生/3年(当時) 山崎 大輔
※本記事は、滋賀大学データサイエンス・AIイノベーション研究推進センターのセンター誌『Data Science View Vol.5』の特集企画『私の「研究」履歴書』に掲載された記事の内容に若干の修正を加えたものです。本文中に記載されている内容や所属・肩書き等はすべて取材当時のものです。

ちょっとした事の積み重ね

Q.創薬に関する研究をすることになった経緯を教えてください。

小さい頃から、薬についてすごく興味があって、粉とか小さな白いものを飲むだけで、病気が治るのがすごく不思議でした。けれど数学も好きだったので、将来は高校の先生になろうと思い、大学で数学科に入りました。シマウマの縞はどうして白と黒になるのかをシミュレーションするための数式を研究テーマにしていたんですよ。でも、研究室の先生の奥さんがこの数式を使って医療分野の研究をしていて、「数学をやっていても医療の研究をして良いんだ」って思ったんです。これは薬づくりの道に進むきっかけの1つでしたね。大学を出て就職した所で、薬学の研究と関わる機会がありました。そこで、「やっぱり薬の研究がしたい!」と思い、大学院に入り薬学の研究室に行きました。それが本格的に創薬を研究することになったきっかけです。ちょっとした事の積み重ねですね。

データから薬の化学構造を予測

Q.どのような研究をされていますか?

薬の化学的な構造から薬の性質を予測する、いわゆるインシリコ創薬の分野で研究をしています。薬を創るときには、ものすごいたくさんの時間とお金がかかると言われていて、薬ができたとしても患者さんに届くのには時間がかかります。それは、いろいろな実験をしないと、薬に効果があるのか、副作用がなく安全なのかを調べることができないからです。そのため、今あるデータから、薬の副作用や薬の効果を予測できたら良いのではないかと考えています。
薬に関する効果を予測するには機械学習が用いられています。機械学習を使った予測はどんどんブラックボックス化していて、予測結果が悪かったときに、薬のどの部分構造を変えたら良い薬になるかがわからないんです。もっと薬を良くするためにはどうしたら良いのか。予測するのはもちろん、特徴量の効果的な選択をしてどんな構造があればもっと良い薬ができるのかを提案できる方法の開発を目指しています。

Q.研究の楽しさはどんなところにありますか?

「この方法を使ったらもっと薬らしさがわかるんじゃないの?」っていうのをひらめいたときと研究結果に製薬企業の人が興味を持ってくれたときかな。薬らしさというのは、薬が吸収されて効果を発揮することや副作用がないことを意味します。データを使って薬らしさを予測していますが、薬を実際に創るのは製薬企業の方なんです。分析側はデータを使って「こんな薬が良さそうですよ。」っていう提案しかできない。だけど、製薬企業の方たちが気づいていない薬らしさがあります。解析結果を基に「こういう特徴があったら薬になりやすいですよ。」と提案したときに、「それ見たことない! 面白そう!」って言ってもらえたときは、薬創りに繋がったかなと思える瞬間です!

異なる分野の方の考え方を尊重する姿勢が重要

Q.これからデータサイエンティストになる方々へのメッセージをお願いします。

違う分野の人たちの考え方を尊重する姿勢を持ってほしいです。データサイエンティストがすることは、違う分野の人たちのデータを解析して、その人たちが喜ぶような価値を見出すことです。全く話をせずに提案だけをすると、相手は納得しません。分析をすることは大事だけど、何をしてほしいのか、何ができたら嬉しいのかを常に議論してく必要があります。それができて初めてデータサイエンティストとして価値のある結果を提案することができます。他の分野の人たちの考え方を大事にできるデータサイエンティストになってほしいです。

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