教員インタビュー
ゲームが好きで自作をしていたら、いつの間にかこんな遠いところまで来てしまいました。プログラミングを長いことやっていますが、実はタイピングは「かな打ち」なんですよね。

佐藤 智和
データサイエンス学部 教授
研究分野:コンピュータビジョン
現代では自動運転技術やバーチャルリアリティ(仮想現実)といった技術が急速に発展し、そのテクノロジーを支えているコンピュータビジョン(画像処理)技術は日に日に重要性を増しています。それでは、このような技術がどの様に生まれ、またどのようなことが可能になるのか、佐藤教授の人生経験から最新の研究動向までざっくばらんに語っていただきました。
聞き手 データサイエンス学部講師(当時) 伊達 平和
※本記事は、滋賀大学データサイエンス・AIイノベーション研究推進センターのセンター誌『Data Science View Vol.2』の特集企画『私の「研究」履歴書』に掲載された記事の内容に若干の修正を加えたものです。本文中に記載されている内容や所属・肩書き等はすべて取材当時のものです。
私とゲームとF-ZEROと
Q.佐藤先生はどのような子ども時代を過ごされましたか?
小学校2年生のときパソコンが家にきて、それからゲームを作るようになりました。当時はBasicを使ってプログラミングをしていたのですが、最初はprintとかinputコマンドを使ってクイズゲームを作っていましたね。でも小学生ではまだアルファベットは習っていなかったので、例えば“files”というコマンドだったら「はにりいと」とキートップのかな表記で命令を覚えていました。そのせいで、今でもタイピングはかな打ちなんです。それから中学生、高校生ともずっとゲーム作りをしていて、例えば3Dポリゴンの処理を効率的にしたくてCやアセンブラを独学で勉強しました。大学生になったらコンピュータクラブに入り、部員達と“Hover Racing”というレースゲームを作りました。スーパーファミコンでF-ZERO っていうゲームがあって好きだったんですけど、これを3Dに出来ないかと思って作った作品です。ソニーのコンテストで銀賞をもらったりしましたし、ゲームは本当にいろいろつくりましたね。
Q.ではそのままの勢いで研究者になったんですか?
そうですね。学部4年生のときに、配属研究室での研究テーマは当時なぜか「じゃんけん」で決めていたんですけど、じゃんけんに負けてしまってやりたいことが出来なかった。そんなとき、奈良先端大だったらやりたい最先端の研究が好きにできると先輩から口コミで聞いて、画像処理を専門でやっている先生の研究室に行きました。あとは、そこでやりたいことをやっていたらいつの間にか研究者になっていたっていう感じですね。ちなみに、学部当時にじゃんけんで負けて選んだ研究テーマも今の研究に役立っていますので、何事も経験かと思います(笑)。2018年の1月から彦根に来ましたが、彦根はご飯が美味しくていいですね。寒いですけど(笑)。
画像処理技術の応用先=∞?
Q.先生の研究は、コンピュータビジョンということですが、どのようなことをしているのでしょうか。
簡単にいうと、カメラやセンサーで実世界を画像として観測・解析することで、三次元情報を取り出してその空間をコンピュータ上に再現したり、あるいは仮想世界の情報と実世界の画像を重ねて複合現実空間を作り出すといった要素技術の研究開発から、これらの応用まで幅広く研究をしています。 応用の例としては、例えば最近では運転支援技術が実用化されてきていますが、このような運転支援システムの性能を安全に評価するためのシミュレーション空間を仮想空間内に構築するための共同研究を行っています。また、ほかにも東大寺を舞台としてAR(Augmented Reality)型の観光システムを試作して一般公開実験をしたこともあります。この研究では、ちょっとしたアイディア・発想の転換によって、これまで実現が難しかったスマートフォン上での実用的なAR型観光ナビゲーションができることを実証しました。
応用先は多いですが課題も多いですね。様々な工夫によって精度を上げることはもちろん、動いているものをどのように仮想空間内に取り込むかといった課題もあります。最近の共同研究では、動画や画像から特定の対象物を消す「隠消現実感」にも挑戦しています。例えば、動画から人だけを消したりする技術ですね。興味を持っていただけたら是非一緒に研究が出来たらと思います。
自発的に行動せよ
Q.これからデータサイエンティストになる方々に一言メッセージをお願いします。
やはり「目標を立てて自発的に行動をする」ということが重要だと感じています。仕事や勉強をする上では、もちろん与えられることも多いでしょうが、ただ待っているだけではやりたいことはできません。自分が何をしたいのかを考え、常にアンテナを張っていることが大切。もちろん、煮詰まったり、アイディアが出てこないときもあるでしょう。そういう時は、ブレインストーミングをして視野を広げ、思考を柔軟にしてみて下さい。また、自分と専門の違う人との意見交換も新しい気付きにつながると思います。そういう意味ではコミュニケーション力も重要ですね。
