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《必然と偶然のはざまで 〜自然が奏でるアートと湖上安全のデータサイエンス〜》開催レポート

 2025年7月18日(金)、滋賀大学イニシアチブ棟にて、“Data Science & Art Talk & Audio & Visual Session” を開催しました。

「確率」とは、事象が起こる“確からしさ”を示す合理的な指標。一方、「アート」は、常識や論理を超えたところに新たな価値や感覚を生み出す営みです。本イベントでは、この二つの領域が融合し、「必然と偶然のはざま」をテーマとした体験型即興パフォーマンスが繰り広げられました。

湖上の風から生まれた音と、環境アートの融合

 イベントの中心となったのは、びわ湖周辺に風速計を設置し、収集・分析を行っているデータサイエンス学部の自主ゼミ活動です。

 学生たちは、風速データに加えて、びわ湖の釣り糸や三味線の糸を使った“エオリアンハープ”を湖上に持ち出し、自然の風によって生まれた音を録音しました。録音された音は、ChatGPT Eduを活用して作成したプログラムによりノイズ除去され、最終的には、びわ湖の砂を振動させて幾何学模様を描き出す「クラドニ図形」へと昇華されました。

 この素材をもとに、環境音楽家・森 崇氏が即興演奏で共演。風や自然が奏でた音と、森氏による音楽が融合し、映像とともに交錯する幻想的なアート空間がイニシアチブ棟1階の和室に出現しました。

学生・アーティスト・研究者が紡ぐ「共創」の場

 イベントでは、まず自主ゼミに参加した学生3名が、それぞれの取り組みと成果を発表。続いて、データサイエンス・AIイノベーション研究推進センターの深谷良治教授と、音楽家の森氏による対談が行われ、「偶然と必然──即興と判断のあいだで」などをテーマに対話が交わされました。

 最終セッションでは、森氏による即興演奏が行われ、風音・波音・ハープ音が融合。音によって描かれるクラドニ図形が、和室の天井から垂れ下がる紗幕に映し出され、砂が振動によって形を変えながら、まるで宇宙の星雲や銀河を想起させるような光景を生み出しました。音と映像が一体となったこのオーディオビジュアル・パフォーマンスは、参加者の五感を刺激する特別なひとときとなりました。

参加者の声

データサイエンス学部 4回生:
 「ホンモノのゼミ活動と芸術家の共創という点で、非常に意義深かったです。データ自体には意味がなくても、アートを媒介することで意味が生まれ、そこから価値が創造されていく可能性を感じました。“審美眼”を危機察知のセンサーとして活用するという視点は、人間拡張的で非常に興味深い試みです。」

データサイエンス学部 3回生:
 「普段は視覚からの情報が中心で、風向きなども目で見える“色”や動きで判断していますが、今回は聴覚で感じた風から風景を想像するという新鮮な体験ができました。滋賀の糸と砂を使って、琵琶湖の音を表現していた点もとても面白かったです。」

発表したデータサイエンス学部 1回生:
 「ハープと森さんの音が自然に混ざるとは思っていなかったので、音に包まれるような空間が新鮮でした。琵琶湖の砂が光って、銀河のように見えたのも印象的でした。」

 「エオリアンハープの音が、森の中を吹き抜けるそよ風のようで心地よかったです。大学の中なのに、イベントの空間だけまるで異空間のような、特別な時間を過ごせました。」

発表したデータサイエンス学部大学院生:
 「自分たちで録音した音がアートになるという、初めての体験に感動しました。風に由来するハープの音は、さまざまな自然音と調和する可能性を感じました。イニシアチブ棟という場所で、このような形でゼミの活動が結実したことも、非常に感慨深かったです。」

科学と芸術の“あいだ”に立つ

 データサイエンスとアート──合理と感性、必然と偶然という対照的な要素が、本イベントでは見事に融合しました。風、音、砂、光という自然の素材が、学生たちの探究と創造を通じて新たな表現へと変化していく様子は、データサイエンスの可能性を拡張し、人と自然の新たな関係性を描き出す試みでもあります。

 今後も滋賀大学データサイエンス学部は、学際的な知の融合によって社会課題にアプローチし、新たな価値を生み出す活動を続けてまいります。

イベント開催の様子